結論から先に

購入していただいた種水を利用している場合、追加する養液は水:酢:ジュースを10:1:1の割合で混ぜたものを利用していただければ大丈夫です。
追加する量は最大でも種水の3倍程度までとしておいてください。
この際にもし手元にあれば、後述する干しブドウも20mlに対して1~2粒ほどを目安に入れていただくとより増えやすいです。

もしもともとご自身がお持ちのビネガーイールを使用する場合は、干しブドウは必須です。その場合は20mlに対して2粒入れてください。

養液の材料について

:水道水そのまま利用でも死にはしないですが、浄水を利用する方が無難です。1日汲み置きして塩素を中和した水道水でもOKです。

:なんでもいいです。使う量も少量なので、台所にあるものを利用してください。新しく買う場合はリンゴ酢は高いので穀物酢などでいいと思います。
酢以外の調味料が入ったものは使用しないでください。

ジュース:酵母のエサである糖分があれば何でもいいのですが、新しく買うのであれば100%リンゴジュースが無難です。安い濃縮還元のやつで問題ないです。
炭酸飲料は使用しないでください。

干しブドウ:一番のキモです。飼育液の中に酵母菌を入れるために利用するのですが、自分が販売している種水にはすでに酵母菌が住み着いています。ただ、前述したように新しく養液を追加する際にも入れた方がより安定して増えやすくはなります。購入される場合はオイルコーティングのされていないものを利用してください。
把握している範囲でアマゾンで一番安いものへのリンクを文末に記録しておきますので、必要であればご利用ください。(250gで600円くらい)
おつまみとしてドラッグストアやコンビニで売っているものはオイルコーティングされているので、利用できません。使ったら腐ります。

まれに干しブドウの周りにぶよぶよした見た目の菌糸が発生することがありますが、これは酵母菌のコロニーなのでそのままにしておいてください。

容器:寸胴な形のものが好ましいです。酢酸菌は水面でのみ増殖するので、水面の面積が広い形が望ましいです。また、後述するようにたまに容器側面の掃除が必要になるので、その点からみてもするするした寸胴タイプがいいです。
空気穴は特に作る必要はありません。埃が入ったりしないように、蓋は乗せておいてください。

いろいろ試しましたが、掃除のしやすさやコストから考えるとダイソーで売っているこの容器がいい感じです。

養液を追加するタイミング&した後

購入直後はすぐに養液を追加してください。
エサが無かったり過密状態になるとビネガーイールは耐性成虫という状態になり、活動を弱めて寿命を延ばすように体を作り変えます。
輸送の最中に耐性成虫になっている可能性もありますが、養液を追加して1日ほどすればまた活性化します。

養液を追加した後、気温にもよりますがおおよそ1~3日で水面に白い膜が張りますが、これは酢酸菌の膜でビネガーイールのエサになりますのでそのまま放置してください。

こんな感じで膜が張ります

この時水面から2センチほど上まで菌膜が上ってくる可能性があるので、水面から容器の縁までは余裕を見ておいてください。

ちなみに、ググるとよく出てくる養液では、この菌膜がなかなか出なかったり、出てもかなり臭かったりしました。

しばらく放っておくと、イールが増えて菌膜が消滅します。そのあたりでエサとしての利用を開始してください。目安は2週間ほど見ていただければと思いますが、だいたいそれより早く菌膜は食べつくされるかと思います。
(菌膜が完全に消える前から利用しても大丈夫です。水中に落ちた菌膜もメダカがパクパク食べてました。)

目に見える菌の膜がなくなっても溶液中には菌がいますので、その後もイールは増え続け、水面が波打つほどまで増えます。
もし株分けをして増やすことを考えられているのであれば、増殖のピークであるこのタイミングで上澄みを一部取り出し、その2~3倍量の追加養液を加えるのがいいかと思います。可能なら干しブドウも加えてください。

菌膜が消滅した後はエサとしてちょっとずつ利用していく形になるかと思いますが、そのまま2~3週間すると少し嫌な臭いがし始める可能性があります。その際は元気なイールのいる上澄みを一旦別の器に移し、残りの養液は下から1センチほど残して捨て、先ほど分けておいた上澄みを戻します。その後、このレシピの配合で養液を追加してください。

上澄みだけ採るのが面倒な場合はシャカシャカ撹拌して養液の中身を均一化させた後、半分ほど捨ててください。
種水は50mlより多くなっていることと思いますし、この澱には酵母菌がぎっしり詰まっているので初回よりも増えるスピードは速くなります。

どうししても酢酸菌の臭いはいずれ出てきますが、ご紹介したレシピを利用していただければレーズンやリンゴの甘い香りやパン発酵時のような軽いアルコールの香りがしたり、梅干しのようなさわやかな酢の香りがしたりします。
溶液中の環境により、香りは逐次変化するのでたまに気にしてみてください。

利用の仕方

自分はウネウネしている水面からスプーンで小さじ1杯ほどすくい取り、そのまま水槽に入れて使っています。
酢の濃度も低いし濾すのが面倒なのでそうやっていますが、エビも一緒にいる30センチ水槽で数か月たっても特に問題は感じません。
ただ、養液自体が栄養豊富なのでタニシなどのろ過摂食する生き物も一緒に入れておくとより無難かと思います。

養液ごと入れるのが不安な方は一度水の入ったコップに溶液を1杯入れて、しばらくして水面に集まって来たイールを再度すくって水槽に入れるか、コーヒーフィルターなどで濾してご利用ください。

メンテナンス

基本的にメンテナンス不要ですが、水面より上にできた菌膜を食べに這い上がってきたイールがその場で脱皮を繰り返したり、生涯を終えるなどしてできた白い塊が水面よりちょっと上に徐々にでき始めます。
これはたんぱく質などの栄養源なので、いずれ緑カビや黒カビがそこに生えてくると思います。

白い段階では特に問題はないので、「なんか塊にちょっと色がついてきたなー」と思ったら、ティッシュなどでぬぐい取ってください。だいたい月に1回ほどです。

水面より少し上に白い塊ができます

カビる前であればこの白い塊もメダカにあげちゃってもいいです。よく食べます。

増えすぎた場合

長期保存する方法について、線虫の特性をもとに現在調査中です。
ある程度方法が確立出来たらここに追記します。

追加養液を作るときのコツ

養液の内訳は水:酢:ジュースが10:1:1で干しブドウをいくつかということは前述した通りで、これらを一度に混ぜ合わせてしまっても問題はありません。
ただ、そんなに急がない&多少面倒でもOKであれば、最初は水と干しブドウだけを合わせた状態で3日ほど置いてみてください。
さらに、1日1回蓋をあけて養液を撹拌(酸素を供給)することでより効果が上がりますし、気泡がついて浮いてきた干しブドウを再度沈める効果もあります。
※干しブドウは水面に顔を出したままだと白カビなどがつきますので、もしカビてしまったらそのブドウは取り出してください。

こうすることによって酵母が食事を邪魔されずに好気環境下ですくすく育ちますので、その後の酢酸菌のエサの生産スピードが若干上がります。
干しブドウの周りにもやもやした酵母の菌糸が出ていれば大成功です。

干しブドウの数に関しては多い方が酵母が増えやすいというのだけ把握していただいて、お好みで量を増やしてください。
150mlに対して20~30粒も入れれば、養液完成時にそうとう甘い香りがすると思います。

このレシピの仕組み

いろいろ実験して分かったことですが、どうやらビネガーイールは酢酸菌を主食としているようです。
酢酸菌は酸素とアルコールがあると増える菌で、増えてくると水面に菌の膜を張ります。

この酢酸菌が食べるためのアルコールを作っているのが酵母菌です。
酵母菌はちょっと特殊な菌で、酸素があるときは増殖に力を入れ、酸素がない時は糖をアルコールに変換する働きをします。
良く出回っているリンゴを入れるというノウハウは、おそらくリンゴ酢から連想してリンゴを入れてみたら付着していたフルーツ酵母がリンゴの糖を分解してアルコールを作り始め、酢酸菌が増えたためにイールも増えやすかったんではないかなと思います。予想ですけど。

ただ、フルーツ酵母というのはだいたい皮についていまして、ネットで見てると皮を落としてる方もいますし、天然酵母に関する説明によるとそもそも栽培時に農薬類が使われていると発酵力は落ちるらしいです。リンゴって基本的に農薬がないと育てられないので、お手軽フルーツ酵母とは言えないんですね。季節ものですし。

パンづくり関連の情報を調べてみると、天然酵母初心者に一番おすすめなのは干しブドウだということです。
実際に生のフルーツなども踏まえていくつか比較したら干しブドウでのイールの増え方がかなり調子がよく、しかも場合によっては養液からブドウの甘い香りがすることもありました。
なので、酵母を取り入れるなら干しブドウが一番おすすめです。

酢の濃度に関しては、酢が100%~0%まで段階的に試したのですが、濃度が濃いほど菌膜が張りにくく、イールは増えずらかったです。
逆に0%にすると水中に正体不明のモヤモヤしたものが発生したことがあるので、まったく無いのもあまりよろしくない模様。
自分の比較した中では0%~25%くらいまではイールの増えやすさに体感できる変化はなかったのですが、コストの問題や水槽に養液ごと投入している自分の利用方法から考えて、全体の1割弱という量にしています。大匙1杯っていうのがわかりやすかったのもあります。

ジュースは酵母菌のエサで、パン作りにおける干しブドウ酵母のつぎ足し方法からヒントを得ています。
酵母のご飯である糖は干しブドウから調達できるんですが、パン用酵母液と比べてこのレシピで利用する干しブドウの数はかなり少ないですし、最初から糖が水に溶け込んでいた方が酵母が手っ取り早く食べられるので少し入れています。干しブドウが入っていれば、入れなくてもそれほど問題はないです。

今後調べること

継ぎ足し時の澱の有無によるイールの再増殖スピードの違い
低温適応現象が発生するのか、またその条件